お礼と願望

春から夏にかけて変わる間の季節

肌寒かったり、暑かったり不安定な日が続くと
その内、雨が降り続く日がやってくる。

水無月

昔はソウ呼ばれえていたらしい・・・・

露と呼ばれたこの月に水の無い月だなんて
先人は何を考えて付けたんだか・・・・・

そんな事を考えながら先生の話なんて聞かないで
何日ぶりかに晴れた空を見ていたら
教台の上に立っている先生から怒られた・・

「なんなのさ!ちょっとよそ見していただけなのに
 なんで、職員室にまで呼ばれて怒られた上に
 課題まで出されるなぁ〜」

誰一人通らない廊下を歩きながら、独り言を
言いながら教室に戻って行くと、廊下と同じ様に
誰一人いないと思っていた教室に入って行くと
背筋をピンと伸ばし椅子に座っている男子生徒の姿が
視界に入ってきた。

確か、あの席は・・・

他の男子生徒より大人しくて優しいし
長身で顔も成績もイイとの事で裏人気トップの
伊角君の席はず・・・

話し掛けるべきか話し掛けないでいるか迷っていると
相手の方が自分の視線に気付いたのか
振り返り話掛けてきた。

さんどうしたの?皆と一緒に帰ったんじゃかったの?」

誰にでも見せる穏やか表情で話し掛けられた。

「その予定だったんだけど、さっき数学の授業の時に
 よそ見してたら呼び出しされた上、課題まで出されて」

言葉と共に手に持っていた課題のプリントを見せると
伊角も数学の時間の事を思い出した様に頷き

「あぁ、あの時の!確か受験生なのに自覚が無いて
 怒られていた」

「そう、ソレ!受験生の自覚て何よ・・・
 毎日毎日緊張感なんて持ってられるか!
 たまには息抜きもてもいいじゃない!!」

数学の教師に怒られて溜まっていた鬱憤が
伊角と話している事で、感情に変え出てきたらしく
言葉の途中から段々と大きな声になり
最後には愚痴へとなっていった。

そんなの言葉を訊いても伊角の表情は終始穏やかで
微笑を絶やす事は無く、掛けられた言葉にも
伊角の心情が出ている言葉だった。

「確かに。こんな良い天気だったら遊びに
 行きたくなるよなぁ」

先ほどまでを見ていた伊角の目は
窓から見えるほんの一部の空を捉えてた。

も伊角の目が捕らえているが解ったらしく
伊角の言葉に同感だと頷きながら

「そうだよね!ソウ思うよね!
 それに、こんな綺麗な青空に見とれていて
 何が悪いのよ!」

「綺麗?何時もと変わらない気がするけど・・・・」

の言葉に伊角は空から視線を外しを顔を見ると
再び空へと視界を変え、に言葉をかけた。

「確かに今は変わらないかもしれないけど
 午前中はすっごく綺麗なんだから。
 今度、見上げて見ると良いよ」

空から外されたの視界は伊角の席の前の椅子を
写し、課題プリントを伊角の机に置き
視界に入った椅子を引き、伊角と向き合う様に座った。

「ところで伊角君は何してるの?」

机に置かれた2つのプリントは同じ数学で
同じ内容の書かれていた。

「このままだと時間が足らないらしくって
 本来補習なんだけど先生がプリントで良いて
 言って下さってね」

「あぁ、今週休んでたもんねぇ」

窓から空を見ていた伊角がの言葉に
視界を空からに移しながらからの質問に
答えると先ほどと違い淡白な答えが聞こえ
指摘されたプリントを見ると、どうやら伊角の答えを
写していた。

さん」

「何?」

「写すのはどうかと思うけど・・・」

「自分で解くのメンドクサイんだもん」

言葉を口にすれば即答で言葉が返ってきた。

「メンドクサイて・・・・もし、俺の答えが間違っていたら
 どうするの?」

「どうもしない。
 伊角君も私の事は気にしないで進めて」

さんは俺が解いたのを写していくの?」

「うん。頑張れ伊角君!」

今までプリントしか見ていなかった
顔を上げ、伊角の顔を見たが
すぐさま、プリントを見て書き写した。

ようやく自分の顔を見たと思ったらすぐさま
書き写す為に下を向いてしまったの姿に
苦笑すると、自分のプリントに回答を書き始めた。

誰一人居ない廊下には物音は無く
ただ静寂が広がっていたが、教室内も同じ様で
両者の言葉を交わす声はなく、筆を走らすと
時を刻む音だけが教室内に響いた。

暫くすると、秒針と共に聞こえていた音の1つが消え
そののち、声という音が教室内に響いた。

「伊角君、問9の問題間違ってるよ」

写していたはずのから間違いの指摘をされ
自分のプリントとのプリントを見比べてみると
の指摘通り答えが間違っていた。

「途中、私が追いついちゃったから慌てたんでしょう?
 ダメだよ、足し算を間違えるなんて事しちゃあ」

「確かに・・・ソウだなぁ・・・・・」

の指摘に曖昧に答えると、

「伊角くんて、落ち着いている様に見えるけど
 追い込まれると弱いタイプだよね」

同じクラスになって席が近くになる事が無く
話す事が少なかった相手からの自己判断に
驚き目を見開いていると、

「私の洞察力を侮って貰ったら困るなぁ〜
 これでも、ちゃんと見てるんだよ。例えば・・・・」

はクラスメートの事を次々話し出し、
まさしく、ソウダと頷いてしまえる所が多々あった。

俺はさんの事を毎日見てるから
さんの事だったら解るよ。

心のどこかに持っていた自信が崩れ落ちる

「でも、解らない事があるんだよね?
 伊角君て毎週同じ曜日に休んでるよね
 なんで?」

の問いかけに返事は返ってこなかった

「伊角君?お〜い伊角君?」

黙ってしまった伊角のまじかまで顔を近づけ
お互いの顔の間でが手を入れ左右に振ってみるが
反応は無かった。

「慎一郎くん!!」

教室だけではなく廊下にまで響くような大きな声で
名前を呼んでみると

気が付いたのか、驚いたのか急に体を動かし
机の上に置かれていたプリントが足元に落ちた。

「ようやく帰ってきたわね!
 さっきの質問に答えてくれる?」

「さっきの質問?」

椅子から降りず身体を動かし足元に落ちたプリントを
広いながら訊き返すが

「訊いてなかったんだ・・・・・
 まぁ、そんなことより課題提出と行きましょうか。
 遅くなると怒られそうだし」

座っていたイスから立ち上がり、元の位置に戻すと
カバンを持ち伊角を教室に残して職員室に向うと、
後から伊角もついてきた。

さん。聞いてなかったのは謝るから
 さっきの質問の事をもう一度教えて欲しいんだ」

「伊角君は毎週同じ曜日に休んでるよね。
 なんで?これが、さっきの質問。
 訊いたんだから答えを教えてくれるわよね」

職員室に向かい歩いている廊下で会話は続いてゆく

「それは・・・・・碁を打ってるんだ」

「ご?」

「うん」

「ごて、五目並べとかする碁?」

「まぁ、正式に言うと囲碁なんだけどね」

「伊角君て凄い人なんだねぇ・・・・・・・」

「そんな事無いよ。さんもルールさえ覚えれば
 打てるよ」

歩調を合わし話しながら歩いて行くと
職員室に着き、中で待っている先生の課題を提出すると
これからは集中して授業を受けるように
と、は注意を受け
伊角は学校とプロ試験の両立は大変だろうが頑張れよ
と、言うと、ようやく課題から開放され帰れる様になった。
 
「やっぱり伊角君は凄い人なんだねぇ」

の呟く様に出された言葉に

「本当にそんな事無いよ」

「そっか、ま、囲碁の事は全然解らないけど
 応援はするよ。それと今日見せて貰ったお礼として
 駅までカバン持ましょ」

「お礼?」

「そ!私、自転車通学だから後ろに乗せてって上げても
 良いんだけど見付かると五月蝿いからね。
 ま、伊角君が違うモノを望むならソレでも良いけど」

帰れるとあって足早に歩き、伊角より2・3歩前を歩いていた
が振り返り、後ろ向きになりながら歩いた。

そんなを見ながら、出された条件と自分が望むモノ
がどちらが良いか考えていた。

「俺が望んだら、さんは何でも叶えてくれるの?」

「私が出来る事だったらね」

予備は張った。
返事も貰った。
後は言うだけ・・・

「じゃあさ・・・・・俺と付き合ってくれないかぁ・・・・」

下駄箱での告白となった

は伊角の顔を見つめ
伊角はの返事を待った
 
数秒の時間の流れが倍の長さに感じた。

「私で良いの?」

さんじゃなきゃイヤだ」

「後悔しない?」

「しない」

お互いの目を見て交わされる会話は
考える時間が無く、お互いが即答で返していった。

「解った。は伊角君と只今からお付き合いします」

微笑みながらの言葉の無い様に呆気を取られたが
自分の答えにYESを貰い互いに微笑み合うと
下駄箱を後にし帰宅に付く。

先ほどのの言葉通り、伊角のカバンを自転車に乗せ
駅まで互いに歩いて行く

「お付き合いするという事は、伊角君はこれから
 私の事を名前で呼ぶて事だよね」

「名前?」

「そう。私、伊角君には名前で呼んで貰いたいのよ」

「じゃぁ、俺の事も名前で呼んでくれる?」

「ヤダ」

「どうして!?」

「私、伊角て響き好きなんだもん」
 
「そっか・・・まぁ、さんに読んで貰えるなら
 どっちでもいいなぁ」

「伊角君、訂正して言い直して」

「え!?その・・に呼ばれるなら
 どっちでも良いかな」

そんな約束がなされた朝、お互い教室で顔を合わせ
挨拶を交わすと

「伊角君にコレを上げようと思って持って来たのよ」

差し出された白い封筒を受け取りながら

「ありがとう、さん」

言葉を言うと、差し出された紙袋はカバンに収められ
慌てて言い直し、ようやく受け取る事が出来ると
中から神社のお守りが出てきた。

「応援はするけど期待はしてないから
 無理せず頑張ってね」

手の上に落ちたお守りを見ていると、から
言葉が掛けられた。

複雑な言葉だが、応援はしてくれるし
無理せず頑張れ
と、言ってくれたの言葉を体の中に残し
から貰ったお守りを大事そうに胸ポケットに入れ
これからの戦いに挑む決意をした。



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                初!碁ドリームです・・・・

                なんだか可愛くない主人公でごめんなさい<土下座
                TVで伊角さんに落ちて、すっかり書く気イッパイで
                書いたのですがどうもカラ周りをしてしまったみたいで・・・・・

                できれば続きを書きたいなぁ〜なんて思っていたのですが
                どうでしょうか?